熊本大学での意見交換 (半導体分野の研究・教育について)
熊本県に続き、熊本大学にて半導体分野の研究・教育について話を伺いました。
説明の概要です。
・熊本はもともと半導体の素地があった。2001年にSCK(ソニーセミコンダクタソリューションズ)が設立、ミニセンサの世界シェア5割だった。
・熊本大学は九州で半導体企業への人材輩出数が最も多い大学となっている。2021年にJASMが設立され、熊大からの就職が最大人数。
・半導体人材は簡単に育つわけではない。2018年から半導体の研究と人材育成をしていた。
・萩生田経産大臣がJASMに人材供給するとし、2022年に半導体研究センターが設置された。産学官共同研究や国内外の研究機関・企業との連携に取り組む体制が構築された。
・半導体の研究教育には多大な資金や場所が必要。国・自治体・企業の支援が不可欠。
・組織整備について、センターに集めた人員では不足で、6人の常勤を補充、さらにクロアポ(企業と給料を按分)を増員。ありとあらゆる手段を使っている
・R6から半導体デバイス工学課程と情報融合学環DS半導体コースを設置。これが目玉。
・急いで人を育てなさいというオーダーがあり、工学部3年次編入学の定員を20名増員、R6からは県立技術短大からの編入も受け入れる。
・大学改革と三次元積層実装が二本柱。地域の中小企業と共同研究契約をしており、10年後に今の2倍の人材を供給するKPIがつくられている。
・熊本大学だけでできないことは他の大学と連携している。例えば東大の分室が熊大の中にある、九大と共有している建屋があるなど。
質疑応答です。
Q 企業との共同研究については?
A 企業がお金と研究者を送り出し、学生と研究し、元の会社に就職するなど。
Q 大学改革とはどのようなもの?
A 分野融合が増えてきている。柔軟に動ける仕組みが文部省からの課題。特に情報は新しい分野で、工学部では賄いきれない。
中間計画を6年ごとに提出する。グローバル、データサイエンス、AIなど文理関係なく学環ができた。
Q クロアポはテンポラル?ポスドクのポジション?
A 更新される。クロアポの方は別にパーマネントのポジションを持っている。ポスドクのポジションではない。
Q 大学の人材確保は?
A 我々は公募しかできない。応募からいい人を採用する。働くとなると家族もいるので、熊本にはなかなか来てくれない。
Q 国の事業について予算的な融通は利く?
A 自由度はない。
Q 留学生は増えた?
A 増えてはいない。
Q 県や市にお願いしたいことは?
A 研究と事業の成果は違う。いつ成果が出るかわからない。責任もって事業化までやるというのは我々のエフォートではない。人材育成はできるが。
熊本県で話を伺った中での課題の一つに人材確保がありました。熊本大学ではもともと研究はなされたものの、JASMの設立に伴う人材確保のオーダーに対して組織再編や企業との連携などで急ピッチで対応していることが分かりました。北海道では半導体に関して企業が集積しているわけではなく、教育もこれからということになりますが、熊本大学の取り組みから学ぶことは多いと思います。対応いただいた飯田全宏教授、総務人事担当の香月壮之介様に心より感謝申し上げます。