熊本県での意見交換(半導体産業について)

北海道議会ではラピダスの誘致に関することついても大きな論点となっています。期待が寄せられている一方で、道内全体へ効果を波及ができるか、人材や企業の一極集中、水源、PFASなど解決すべき課題が数多くあります。熊本県では台湾の半導体メーカーTSMCの建設が進められており、道議会で議論していく上での重要な示唆となると考え、熊本県の担当課の方と意見交換をさせていただきました。

以下概要です。
・熊本としては誘致のための戦略を続けてきたが、誘致のもとにTSMCが来たわけではない。国家プロジェクトでとつぜん来た。セミコンテクノパークに隣接。
・台中の工場をそのままコピペしているため早い。
・九州はシリコンアイランドと言われていたが、消えていた。TSMCで新生シリコンアイランド九州ということでがんばっている。
・会社名JASM。建設は鹿島建設で2022.4着工。24時間3交替で1年半で建設された。ほぼ建設は終わり、2024年末に出荷開始予定。
・回路は12nm、22nm。スマホや車が今後の供給先。ソニーが大きな顧客。
・JASMは1700人を雇用。400人が台湾から出向。家族を含めると750人が来ており、街中では台湾の方をよく見かける。歓迎ムードで街中も盛り上がっている。
・経済波及効果は10年で6.9兆円。新たな雇用、新規企業進出、地場企業との取引、技術向上、産業創出、定住人口増加など。
・全庁横断の半導体産業強化推進本部を立ち上げた。企業立地課がJASMからのワンストップ窓口となっている。
・人材と交通渋滞が課題。
・人材について。今後10年間で1000人のエンジニアが足りないと言われている。①若者に熊本に残ってもらう(企業とのマッチング、小中の出前講座など)②UIJターン(東京・大阪・福岡に事務所を構えている)③地元で育てる(熊本大学で推進)東京、大阪、福岡に事務所を構えている
・半導体を斜陽産業と思っている世代があり、進学の妨げとなっている。
・セミコンテクノパーク周辺が大渋滞となっており、ハード面、ソフト面で対策している。中九州横断自動車道の整備で高速で通勤できるようになる。セミコンテクノバスを開設している。
・熊本ー台北が就航した。現在週7便。以前は熊本ー高雄の週2便だけだった。
・地下水が豊富に出るが、TSMC規模の企業が来ると地下水量が減るため、10月から地下水採取量に見合う量の涵養とした。
・環境影響についてネガティブな発信をしている方がいるが、しっかりモニタリングしていくことで理解を求めている。
・県の未利用工業用地があったが、ほぼ売れた。市町村でも立地が進んでいる。
・農業と半導体関連産業の立地との両立をはかっている。優良農地は守っていく。

質疑応答です。

Q 鹿島建設は半導体施設建設の技術を持っている?
A 人も技術も持っている。建設の目途が立ったら北海道にと言われている。

Q JASMは研究はしない?(ラピダスでは研究もするが)
A しない。

Q 人件費高騰については?
A JASMの給料は熊本の平均と5万円くらいの差がある。他の事業者もそれに合わせるように上がってきている。

Q 外国企業の進出にあたり、基準の緩和などは?
A そこまでルールを作っていない。

Q 新たに学校などは?
A JASMからインターナショナルスクールをつくってと要請があった。他にも私立高校では台湾の生徒を受け入れている。

Q 人材確保のために新たに事務所を開設した?
A 既存の事務所の機能を強化した(新たには開設していない)。

Q 条例変更はあるか?
A ない。地下水保全条例を強化した。

Q 農業との関係についての問題は?
A 農業も守る。バランスが大事

Q 県で工業用水はない?
A ない。工場で地下水を掘る。

Q 北海道では道内全域への経済波及効果が課題。県としては分散を図っている?
A 南北で差がある。北側に企業が集積している。南に八代という第二の年があり、ここに工業団地をという話がある。また、中九州横断道路で新たな展開ができる。なんでも熊本というわけではなく、九州を半導体アイランドと考えている。

Q 他業種から人が奪われる問題は発生している?
A トップクラス技術者のアウトソーシングがなされているが、他の分野からの人の移動はない。他の地域から人が入ってきて人が回っている。

資料には載っていない概況などについてもお話しいただき、たいへん貴重な意見交換となりました。もともと半導体産業があったこと、水が豊富にあることなど北海道とは違う点もありますが、人材不足や県内への波及など共通する課題もあり、県の取り組み事例は道議会で議論する上での貴重な情報となりました。対応いただいた半導体立地支援室の方に心より感謝申し上げます。