第20回全国地方議員交流研修会in沖縄 2日目 分科会(1/30)

全国地方議員交流研修in沖縄2日目(1月30日)は分科会が開催されました。わたしは第3分科会『岐路に立つ日本の社会保障 地域のケアをどう支えるか』に参加しました。

座長・副座長からの挨拶の後、鹿児島大学伊藤周平教授から問題提起がありました。このような話の内容でした。
・訪問介護が危機的。ヘルパーの求人倍率が15倍。倒産が過去最多。
・出生率が減少。お金がないから結婚に踏み切れない。
・少子化対策に3.6兆円。社会保障については「将来につけをのこすな」という意見が出るが、防衛費のときは言及されない。
・子ども子育て支援金が社会保険料に上乗せされる。保険料はそもそも税金でやるべきである。
・高齢者の貧困律は10%。高齢女性の単身世帯では40%。年金が5万しかない。
・女性の低賃金が低年金につながっていおり、高齢女性の貧困は国連からも指摘されている。これはジェンダー問題である。
・高齢者の消費が地方経済を支えており、年金を下げたら地方は衰退する。
・生存権は憲法に明記されている。「公助」ではなく「公的責任」である。
・こども食堂は自治体がやるべき。
・避難所運営は阪神淡路大震災や関東大震災のころから変わっていない。雑魚寝状態。
・100年安心の年金制度は制度の安心であって国民の安心ではない。
・公的病院の統廃合で病床数が減少している。公的病院は2割で、世界に比べ圧倒的に少ない。
・介護保険制度が危ぶまれている。介護事業所が相次いで撤退している。ヘルパーは公務員で雇うべき。
・コロナが5類になり、1年で3万人亡くなったが、報道されない。検証が必要であるが、なされない。
・介護報酬を上げると保険料が高くなる。なぜ利用者が負担しなくてはならないのか。
・介護保険について、利用者は1割負担を払えず、1日3時間しか利用できない。
・この水準では家族介護がないとやっていけない。介護離職は0と言われているが、嘘である。日本では家族介護者に対する援助はない。
・ドイツでは家族介護者を労働者としており、現金手当が支給されている。
・医療や介護は雇用創出効果があり、公共事業より大きい。地域を活性化して人を地方に呼び戻すことができる。

質疑応答
Q ドイツの事例はほかにどのような取り組みがある?
A ドイツは訪問介護は介護保険にはいっていない。医療訪問介護を医療保険で行っている。日本は介護保険に組み込んでいる。日本では1万円の壁と言われており(自己負担できるのは1万円くらいまで)、要介護5で35万円までの枠のうち、1割負担で1万円だと10万円までしか利用できない(上限まで使えない)。窓口負担をなくすべき。

Q 地域を回っていく訪問介護が成り立たない。どのように改善すべき?
A 訪問介護の介護報酬が引き下げられたのはサ高住。施設内にヘルパーが訪問すれば確かに黒字になるが、それは訪問ではなく施設内で介護するのと同じ(サ高住では集合住宅であるため1軒1軒まわる労力が少く収益を上げやすいが、これをもとに報酬の基準が決められると戸建てを1軒ずつ回るような事業は労力の割に報酬が低すぎて成り立たない)。選択と集中をすると取り残される人がたくさん出る。基本報酬に上乗せするなど自治体の責任としてやるしかない。一番いいのは自治体が指定を取って事業所を組み込むこと。

続いて参加議員から報告がありました。

1 福岡市の社会保障と医療制度の課題
• 福岡市の人口増加と高齢化
福岡市の人口は予測を上回るペースで増加しており、住民基本台帳の登録人数は160万人、報道では166万人とされている。高齢化も進んでおり、2017年には高齢化率が21%を超えた。
• 保健所の統合問題
福岡市の7区にあった保健所が中央区に統合され、住民から反対の声が上がっている。統合の理由はコロナ禍での調整の難しさだが、住民に近い判断が必要との意見もある。
• 市民病院の移転と統合
福岡市の市民病院と千早病院の統合が議論されており、病床数を増やす必要がある。移転先の選定が進行中で、東方面に集中する可能性がある。
• 社会保障と経済政策
社会保障の重要性を示す書籍を紹介し、自治体や国が責任を持って取り組むべきと強調。緊縮財政と社会保障の影響を検証した内容が含まれている。
• 食料安全保障と子どもの貧困
食料が商品化され、大量生産・消費が進む中で、食料安全保障の重要性を指摘。子どもの貧困問題に対して、給食の無償化が進められている。
• 福岡市の給食と社会保障
福岡市の給食は調理員が粉から作る努力をしているが、アウトソーシングが進んでいる。社会保障の強化が国の役割であり、自治体の職員不足が問題。

2 荒川区と西伊豆町の介護の現状について
• 介護と地域格差
元荒川区議会議員の川内ひとみが、介護の地域格差と自身の介護経験について語る。都市部と地方の介護格差が深刻で、地方では介護サービスが不足している。
• 介護保険と地方の現状
西伊豆町の介護保険の現状と問題点について。高齢化率が高く、介護サービスが不足している。地方では移動が困難で、介護サービスの提供が難しい。

3 介護離職について
• 介護離職と社会的影響
介護離職の問題とその社会的影響について。介護離職者が増加しており、企業の人手不足が深刻化している。
• 公的責任と民間の介護施設
足立区の介護施設での問題を例に、公的責任の重要性を強調。民間施設の責任不足が問題視されている。

4 地方医療の課題
• 地方の医療現場では、ベッド数の不足や医療スタッフの価値の変化が問題となっている。特に高齢化が進む地域では、医療サービスの提供が困難であり、訪問看護の移動時間が長く、効率的なケアが難しい。
• 福祉施策の地域差
福岡市とその周辺地域では、福祉施策に大きな差があり、福岡市の方が充実しているため、周辺地域からの人口流入が続いている。これにより、福岡市の福祉サービスが過負荷になる可能性がある。

5 地域格差と介護認定の課題
• 地域格差と街づくり
地域格差を解消し、住民に還元するための街づくりの重要性について議論。特に医療と教育のインフラ整備が重要であると指摘。
• 介護認定の地域差と課題
介護認定の地域差や認定プロセスの課題について議論。認定が厳しい地域と緩い地域があり、認定プロセスの改善が必要とされる。
• 介護認定のプロセスと改善策
介護認定のプロセスにおける遅延や不服申し立ての手続きについて議論。ペーパーレス化や民間委託の活用が改善策として挙げられる。

6 介護保険制度の課題と地域での支援活動
• 介護保険制度の問題点
介護保険制度が都市部モデルで作られており、地方では人材不足や報酬の遅延が問題となっている。利用に応じた給付方式が問題で、税金での支援が必要とされている。
• 申請主義の問題
介護保険が申請主義であるため、申請できない高齢者が多く取り残されている。行政の措置や議員の支援が必要とされている。
• 地域での支援活動
地域で孤立している人々を支援するために、弁護士会などと連携し、声を上げられない人々を支援する活動が必要。
• 介護保険の基本報酬の見直し
徳島県では介護保険の基本報酬の引き下げの見直しを求める意見書が提案され、議論が行われた。

介護事業を自治体が行う、公共事業として行うといった公的責任において行うという考えは大変興味深いところです。実現可能な話なのか、そのためにはどのような課題を整理する必要があるか、などについて明らかにし、示していく必要があると思います。財源については様々な政治力が働く結果、社会保障の優先順位は低く見積もられる傾向がありますが、どのようにして優先順位を上げる議論にしていくかが最も大きな課題と言えます。