ホルモン投与を考える その2
トランスジェンダー当事者用語で、『ホルモンボケ』という言葉があります。エストロゲンやテストステロンを使いすぎることで起こる症状で、注意力が著しく低下したり(散漫になるのとは違います)、何度も同じことを確認したり、認知症のような症状がでたり。だいぶん前の花粉症の薬を使ったときと似たような感じですが眠くなるわけではありません。そしてとても困るのが、本人は何も自覚できないということです。そのため、はやる気持ちでたくさんホルモン剤を投与してホルモンボケ状態になり、周囲が異変に気付いて止めても、自覚がないのでやめようとしない、ということがしばしばあります。また逆に、高用量のもの(エチニルエストラジオール0.5mg)や一度に低用量ピルを1シート飲んでも何の症状も出ないという人もいました。このような情報は実際に経験したトランスジェンダーかその周辺にいる人の間では知られていますが、臨床試験が行われていないため医師で知っているという方は少ないと思います。産婦人科や美容外科などで自費診療でホルモン投与をしている友達は何人もいましたが、どのくらいが適量についての情報提供があったという話をきいたことがありません。
なのでわたしは血液検査をしてもらい血中のホルモン(エストラジオール)の濃度が基準値内に収まるように調整しながら慎重に投与していました(プレマリンなどは測定できますが、低用量ピルなどは測定できません)。結局のところ、現状は自分で管理するしかありません。はやく望む性に近づきたいという気持ちはとてもとても理解できますが、ホルモン投与は慎重に冷静に少しずつ進めていっていただきたいと切に願っています。