総合政策委員会道内調査 2日目 知内町・太平洋セメント上磯工場・渡島11市町長との懇談会

総合政策委員会道内調査2日目は知内町、太平洋セメント上磯工場、渡島11市町長との懇談会です。

知内町
担い手確保の取り組みについて意見交換を行いました。このような説明でした。
※講話をメモしたので聞き洩らしや曖昧な表現が含まれることを承知おき願います。

・H30に地域産業担い手協議会が設立。H28に林業の担い手確保の協議会がつくられたのがきっかけで、知内町が引き継いで、農業、水産業、商工業に広げた。
・担い手協議会(通称「親会」)は年2回開催され、各部会で出された意見を親会に持ち寄り、取り組み状況、方針、実績について話し合われる。
・知内高校1年生を対象に、地域の人を招いて講話、知内の仕事の魅力を紹介する「ソクラテスミーティング」が開催されている。
・2年生を対象に、地域創生学習研修発表会が開催されている。
・中学校1年生を対象に学習会が行われている。
・新規就農が増えてきた。横のつながりをつくるため、普及センターの協力で月一で勉強会を行っている。テーマは栽培、技術、農協の制度、農地法、共済制度など。
・林業部会について、いま3名を北森カレッジから受け入れている。
・小学生を対象に木育教室を行っている。
・水産業について、水副連携試験事業が行われ、粉砕した牡蠣の殻を鶏の飼料にしている。農水福連携になるのではと期待されている。
・地域づくり協同組合でニラの生産を行っている。地盤を作って、閑散期に他の産業(水産業など)人材を移動する仕組みをつくっていく。
・3か月のお試し期間のインターン地域おこし協力隊の制度を設けており、その後残ったら3年間受け入れる。
・協力隊のひとりが来年から独立、はじめての新規就農者となる。
・担い手センターは5軒。ここを拠点とする。料金は月15000~20000円(光熱水費込)。施設整備が担い手確保につながっている。農業で14名、林業で3名。センターは
CLT建築で地域材を使っている。

質疑応答です

Q)ソクラテスミーティングはいつから(H23より前か後か)
A)H30から

Q)知内高校の生徒はどの程度定着している?
A)ない。一度外に出る方が多い。大学や民間企業を経て戻ってくる多面いま種まきをしている。

Q)有給でのインターンの成果は?
A)授業の一環だとお客様になってしまう。アルバイトだと、自分がやらないと対応できないことを体験する。(主体性や責任感といった意味と思われる)

Q)高校を出た後、どうやってとどめるかが課題。高校での特色ある取り組みは?
A)知内のことを理解していただくことが大事。知内高校の魅力を外部にPRしている。1年生に私たちから伝える機会をつくっている。

Q)地域づくり協同組合の今後の展開について。登録は町内か町外からか?募集にあたってどういう取り組みをしている?地域おこし協力隊との違いは?
A)業務が多岐にわたると時間がかかるため、今回、農協とニラ生産業者と我々で立ち上げた。そこから(水産業や林業などに)広げていきたい。事務局に入る方はなるべく町外からを考えている。地域おこし協力隊は3年だが、もう少し時間が必要な方は協同組合に入ってもらう。協力隊から法人就労に移ることもできる。

移動中にわたしからこのような質問をしました。
Q)北海道応援団会議は活用されていますか?
A)地域おこし協力隊の研修が振興局にて行われている。

地域づくり協同組合はまだ立ち上がったばかりの取り組みですが、今後、横展開する仕組みが確立し、人材の確保と仕事の平準化につながる成功事例になることが期待されます。

 

太平洋セメント上磯工場
北斗市に位置する東日本最大のセメント工場である太平洋セメント上磯工場におけるSDGsへの取り組みについて調査しました。

説明の概要です。

事業について
・明治23年に北海道セメントとして創業。創立134年で最古。
・年間390万トンを生産。東日本では最大。峩朗鉱山と長さ6.2キロのベルトコンベアで結んでいる。
・工場から2.0kmの会場桟橋が延びており、出荷と受入の2系統
・原料行程→焼成行程→仕上工程を経て製品化される。自動化、省力化が進められている。

リサイクルの取り組みについて
・マテリアル(材料)リサイクルとサーマル(熱)リサイクルがある。年間リサイクル処理量は150万トン。
・建設発生土、下水汚泥焼却灰など廃棄物を使用してセメントを作ることができる。
・リサイクル資源を積極的に活用し、天然のセメントを全く使わない方法もある。
・様々な廃棄物を分析し、調製する。廃棄物を使ってもセメントの品質は落ちない。
・廃タイヤ、自動車シュレッダーダストなどをサーマルリサイクルに使用する。セメント製造工程からは新たな廃棄物は発生されない。
・ダイオキシンや重金属を無害化できる。
・SDGsについて、貧困と飢餓以外はすべて網羅されている。
・セメント工程のCO₂排出量は95%で、キルン1基あたり2500~3000トンを排出している。
・原料由来が60%、エネルギー由来が40%。石灰石を使わず廃棄物を使う、増量材を入れてセメントの量を増やすなどで化石エネルギーを削減している。
・カーボンニュートラル戦略2050を掲げ、サプライチェーン全体としてのカーボンニュートラルを目指す。
・革新技術を順次展開する(アミン法などがあげられていた)。
・カーボンフリーの工場をつくる取り組みについて。C2SPキルン🄬を2030までに全国展開していく。
・コンクリートはCO₂を吸収する性質があり、工程の90%以上のCO₂を吸収できる。
・実装費用について、キルン1基あがり1000億かかるため、政府、産業界全体で進めなければならない。カーボンフリーにはお金がかかる。
・災害廃棄物の受け入れについて、三重県、大分県、岩手県ん、宮城県と協定を結んでいる。
・受入可能な廃棄物の種類と性状、手続きのマニュアル化が課題。

説明の後、施設内を見学しました。文字で説明しにくいのですが、大小数多くの施設があり、金属管が張り巡らされていました。1450度の高温で焼成工程を行うキルンからは熱が伝わってきました。高い所に上ると山側にベルトコンベア、海側に桟橋が伸びているのが見えました(※敷地内の写真の撮影・使用は制限されています)。このような説明がありました。
・防音防塵のため、外部に接する場所に植樹をしている。
・あきば神社(火を司る神)が祀られており、夏に例大祭が行われる。
・廃ガス煙突が3基設置されている。以前は電気集塵(塵に荷電させて集める)していたが、現在はフィルターを使っている。
・石炭の価格が高騰し、工場の競争力が下がっている。石炭を減らすために廃プラスチックなどの受入を推進している。
・職員は238名。メンテナンスの時は1000人くらいになる。
・メンテナンスは年2回。停止するときは本州の工場から出荷する(メンテナンス時期をずらしている)
・七飯側から掘っている。函館山からの夜景への配慮のため。
・ベルトコンベアの設置が早かったため、高規格道路や新幹線もベルトをまたいでいる。

施設案内途中での質問と答えです。

Q)道内炭は使っている?
A)使っていない。価格と熱量が合えばいいが。

Q)煙突のフィルターは詰まらない?
A)詰まるので、叩いて落として原料に戻す。

Q)トイレについて
A)男性が多い職場であるが、女性職員も入り、全部ではないが常駐している場所には女性用トイレを設置している。

Q)熱中症に注意との旗が立っていたことについて
A)施設内は高温になるので注意が必要。飲み物やアイスなどが設置されている。

大型の設備や施設の材料となるセメントを生産する工場でのCO₂削減やリサイクルは規模的に大きな取り組みで、たいへん有意義な視察となりました。

 

渡島11市町長との意見交換会
渡島地域の11市町長よりそれぞれの市町の特色や取り組み、課題についてお話しいただきました。

質疑応答です

Q)全道的にいろんな地域の取り組みをアピールする場を作ったほうが良いのではないかと考えている。
A)都知事選を見ていても、アピールする場がTikTokなどになっている。ひとつひとつだと大変なので、いつでも見れるようなプラットフォームとしてあれば。

Q)水道広域プランなど、インフラ等の広域連携についてどう考える?
A)ごみ、消防など、合併は難しい。技術職の職員を確保できない。保健師が4人いるが3人退職することになったが、代替はできない。包括連携センターが運営できなくなってきている。広域の幅を広げる提言をしていかなければ、現場を維持できなくなる。保健師を道でまとめて地方に派遣していただく、学校などに働きかけるなど環境整備を求める。

Q)若い世代の女性を流出を防ぐことが課題。「人口減少は仕方がない、女性も大学に進学し、いい企業に勤めたい、女性の活躍の場が広がると結婚が遅れるのはやむを得ない」という意見があったが、決してそうではない。若い男性の協力隊をつれてきても、一人の男性が増える。女性が暮らせる、活躍できる場をつくることがだいじだと思うが?
A1)うちは女性の協力隊が小さなカフェをオープンしている。協力隊ではないが、女性がイタリアンを経営している。女性しか活躍していない(笑)。ふるさと教育に力を入れている。
A2)マッチングアプリで女の子が男の子を連れて地元に帰ってくることに役場は驚いた。出会いは我々がなかなかできる施策ではない。子育て支援はできるが、出会いはどこから手をいれていいのか。若い子は人と直接喋ることをしない。ネットだけで顔が見えない。結婚しなくてもいいという若者が減っている。
A3)平和大使に中学生を送っているが、3/4が女性、積極的で成績優秀。うちでは共働きの環境が整っており、消滅可能性自治体にうちの町だけが入っていなかった。
A4)もともとあったデパートがなくなった。若い女性の地元就職・雇用の場がなくなっている。
A5)合計特殊出生率が1.06%。これをあげていかなければならない。日本財団のアンケートで、高校生から大学2年生に将来結婚したいか聞いたところ、したいが半数。子ども産みたいが半数。しかし、経済負担が心配、貸与型奨学金の返済。賃金水準が低い。道央、東京の方が条件がいい。ワークライフバランス、保育環境、公園がうるさいなどなんでも干渉・批判などの課題がある。効果的なものはないが、女性が働きやすい環境、DX、AIを生かす企業育成に取り組んでいる。

ほとんどの自治体が抱えるの最大の課題は人口減少問題で、多くの回答がありました。人口減少対策として、質問の中であげられたように、若い女性が流出しないような、ジェンダー平等や女性の活躍推進などの取り組みが、効果的であることが示唆されています。また、巨額な予算を投じる必要がなく、ほとんどの市町村で既存の担当課等があることから、実は最もハードルが低く、やろうと思えばすぐにでも始められる人口減少対策なのかもしれません。