札幌弁護士会での講話
1月31日に札幌弁護士会にてLGBT研修が行われ、スピーカーのひとりとして参加しました。
研修は次の3本立て
①LGBTの概要・ふちがみ綾子の生い立ち (ふちがみ綾子)
②トランスジェンダーの経産省職員に対するトイレ使用制限について (最高裁での原告側の弁護士)
③パネルディスカッション
①では、LGBTに関する基礎的な話、わたしの幼少期からこれまでに関すること、当事者が抱える困りごとについてお話ししました。
②ではトランス男性とトランス女性の相談内容の違いという点を皮切りに、トランス女性のトイレ使用制限の裁判に関わった中で、その経過や感じたことについてお話しいただきました。被告は「女性職員がセクハラと感じてトラブルになる可能性がある」「痴漢や窃視の犯罪行為と間違えられかねない」など性暴力論を主張。原告の周囲の女性職員の中にはこのような状況に置かれた原告の心中に理解を示す方もいたようですが、原告の上司はそもそも女性職員の意見を聞くことをしていなかったとのことです。
最高裁判決では裁判官全員が性暴力論を否定しました。
トランス男性からの相談に比べトランス女性からの相談は深刻とのことですが、その背景には男女差別(男性差別も含め)があり、トランス女性は女性の劣位性を濃縮し鮮明にしたものを背負わされているとお話しされました。
③では札幌弁護士会の方の司会で、いくつかのトピックについて原告側の弁護士の方とわたしへの質問が行われました。
男女別施設の利用やルッキズム・パス度について
原告側の弁護士より
シス女性の場合、「女性らしく」見えるかどうかを気にしなくとも女性として扱われるが、トランス女性の場合は女性として扱われないことがあり、裁判の中でも容姿に関して言及される。
渕上より
私たちは男女別施設を利用する際、まずトラブルを起こさないという点で選択する。これがよいことかどうかは別として、きれいになりたいからという理由ではなく、男女別施設の利用を含め自認する性で生きるためにパス度を上げる努力をする人もいる。(ちなみにですが、わたしも移行しはじめのころはそうでした。)
研修の後、体験者の話を聞くことができ大変貴重な研修であったなどの感想がありました。このところインターネット上では性暴力論が溢れ、国会議員のなかにもこのような主張をする人が現れ、LGBT理解増進法の内容にも影響しました。性暴力論の前提には多くの誤解(本来は性犯罪者を排除すべきだが排除対象がトランス女性になっているなど)があります。正しい理解を広げていく上で、弁護士の方々に理解していただくことはとても有意義なことだと思います。開催していただきました札幌弁護士会の方、ご参加いただいた方に心より感謝申し上げます。