知事要請

本日、民主・道民連合の役員より、知事要請を行いました。全文を掲載します。

 

北海道知事  鈴 木 直 道 様

 

2024北海道予算編成及び

道政執行に関する要望・提言

 

2024年1月29日

北海道議会 民主・道民連合議員会

会 長   梶 谷 大 志

 

1 行財政運営について

(1)地方分権の推進

・2000年の地方分権一括法施行後も財源と権限の移譲は十分でなく、行き過ぎた地方交付税の削減が道財政悪化の一因となった。多くの地方自治体は、コロナ禍を経て、改めて地方分権を押し進める必要性を体感したはずである。国と地方の役割分担を見直した上で、国から地方への権限と、それに見合った裁量、財源の一体的な委譲を積極的に国へ提案すること。

(2)人口減少問題への対応

・昨年12月22日、国立社会保障・人口問題研究所は、2050年の道内人口が、2020年(522万人)比26.9%減の382万人となり、全国を上回るペースで減少が進む将来人口推計を発表した。とりわけ地域の将来を支える0~14歳人口が20年の56万人から33万人へと深刻な減少が推計されたことからも、子育て支援の更なる充実・強化、男女の賃金や評価、役割といった格差是正、地方に住み働けるための環境整備、特に若者を雇用する場の誘致など人口流出の防止と雇用の創出にこれまで以上に取り組むこと。

(3)財源の確保

a 経済対策に係る財源確保

・令和5年度の総合経済対策による個人住民税の減収額、並びに所得税の減税に伴う地方交付税の減額は、国がその責任において確実に補填することや、減税や給付の制度設計において地方で生じるシステム改修や事務負担の増大に対して、適切な財政措置を講じること。

b 子ども・子育て政策に係る財源確保

・子ども・子育て政策の強化に向けた加速化プランでは、こども誰でも通園制度の創設など地方自治体に大きな影響を及ぼす施策が含まれており、現場などから様々な課題も指摘されている。これらのサービス提供に当たって、本道における地域間格差が生じないよう、必要な財源の確保とともに、保育現場と保護者双方の声を反映した子育て支援策とすること。

また併せて、地方が行うサービス提供には、その地域における実情に応じたきめ細やかな事業実施が求められることから、地方団体の創意工夫が生かせるよう、長期的・安定的な財源を確保すること。

c デジタル田園都市国家構想の推進に係る財源確保

・地方団体の基幹業務システムの標準準拠システムへの移行については、移行に係る経費

について必要額を確実に確保するとともに、影響を受ける全てのシステムの改修等に対す経費についても財政的支援を行うこと。

(4)情報発信の在り方

・道民に対する丁寧かつ分かりやすい情報発信について、知事はテレビや新聞などの媒体に加え、交流サイト(SNS)で直接呼びかける手法も活用しているが、障害のある方々も含めた幅広い年代層の道民に、必要な道政の情報をしっかりと届けられるよう、時宜を捉えた正確な情報を誰にとっても分かりやすい形で発信すること。

(5) 行財政運営

・「行財政運営の基本方針」では、収支不足額の解消に向け、歳出削減や効率化に取り組むとしているが、単なるスリム化で行政サービス水準の低下や労働環境の悪化を招かないこと。

・「行財政運営の基本方針」の推進にあたっては、掲げる目的や効果の達成度を随時、把握・検証しながら取り組むこと。また、特に行財政運営の状況については、道民への分かりやすい情報公開をより推進すること。

・ふるさと納税については、故郷や思い入れのある地域、被災自治体などへの支援につながるといったメリットはあるが、一方で、産業振興を通じて税収増を図るのが本来の姿であることから、税源と権限の移譲によって地方を支える道筋をつけること。

(6) 委託事業における不正防止策

・本年度、委託事業における過(誤)請求や不正受給など不適正な事案が相次いで発覚したことから、適正な執行の確保や不正防止など実効性のある再発防止策に全庁でしっかりと取り組むこと。また、委託期間中における現地調査や公的書類を用いた確認などの完了検査は、相応のスキルを習得した職員でなければ対応が難しいことから、スキルアップに取り組むとともに、該当する職員の配置を推進すること。

2 地方創生の推進について

・現在、総合計画や人口ビジョンと同様に見直しを行っている「第2期北海道創生総合戦略(改訂版)」で今後示される重点戦略プロジェクトが本道における地方創生の取組の中核をなすことから、その目的達成に向け着実に実践されるよう今後具体化される施策を効果的に実践するとともに、人口減少という重大な危機をオール北海道で乗り越えるため、若者による2050年に向けた社会デザインを議論する場を設置するとともに、産学官金労言士など多様な主体との戦略の共有化を図ること。

また、政策を総動員して少子化対策と定住促進の両面から対策を講じるとともに、若者や女性が安心して仕事ができる体制整備や道内で就労する外国人支援を推進すること。

3 物価高騰対策(総論)

・ロシアによるウクライナ侵攻や円安に伴う燃油、原材料などの物価高騰は、3年にも及ぶコロナ禍の後遺症と相まって、道民の日常生活はもとより本道の基幹産業である第1次

産業をはじめ広範な事業活動に極めて深刻な影響を与えており、未だに出口は見えていない。これまでの支援は必ずしもそれを必要とする全ての道民や事業者へ行き届いてはおらず、対処療法的な財政出動の効果は限定的、かつ一時的と言わざるを得ない。中期的な視点での住民や事業者に寄り添った切れ間のない支援策を講じること。

4 雇用と経済対策について

(1)物価高騰対策

・不安定な国際情勢や円安などの要因には依然として変化の兆しはなく、物価やエネルギー価格の高騰は長期化が想定される。こうした中、支援対象者が偏在することなく、その時々に困窮し真に支援を必要とする道民に対し、それが確実に届くようスピード感をもって取り組むこと。また、あらゆる媒体を活用した対策の丁寧かつ反復した周知、さらに申請に関しても可能な限り簡略化し、要支援者が困窮から脱するまで適時・適切な切れ目のない対応を検討すること。

(2)経済対策

・ラピダスの千歳市進出に関しては、道内のデジタル人材の不足や道央圏への人材の集中など、様々な課題が懸念されている。それらへの納得性の高い解決策を早急に示すとともに、「北海道半導体関連産業振興ビジョン」の策定に当たっては、将来的に道内全体へ開業効果をどのように波及させるか、具体的なスケジュールや将来の本道全体の姿を明確に示すなど、道民の理解と協力が得られるよう努めること。

また、行政区域などを越えた広域な調整など道が司令塔の役割を果たすこと。

(3)雇用環境の整備

・昨年の春闘の結果、名目の所定内賃金は2%程度上昇しているものの、物価を加味した実質賃金はマイナスで推移している。勤労世帯の暮らしは厳しさを増しており、また、低所得者層ほど物価上昇の影響が強く、生活はより苦しくなっている。企業存続には「人への投資」が欠かせないとの認識が重要であるが、道内には賃上げ未実施の企業も多く、取引価格の適正化や生産性の向上は、企業単独では限界があることから、道として零細企業でも待遇改善などに踏み出せる環境整備への支援を図ること。

(4)雇用の創出

・本道では、交通、物流、医療・福祉、建設や観光などの多くの分野において深刻な人手不足が続いており、業種間での人材流出が激しくなることも見込まれる。人材育成の充実強化と併せ、多様性に富んだ活力ある地域社会を形成するために外国人労働者の生活環境の改善を進め、問題の解消に努めること。

またラピダスの進出は、半導体人材の受け皿としての雇用創出に関しては明るい話題と言えるが、本道の高専生や大学生などの新卒者を軒並み半導体産業へ誘導するような「ラピダス一本足打法」と思しき政策には潜在的なリスクが潜むことからも、地方の学生や人材の道央圏へ過度な流出を招かないよう、今後生じ得る業種間の所得格差対策なども含め戦略的に取り組むこと。

(5)観光振興を目的とした新税の導入

・現在、道が検討している新税の導入に関しては、早急に使途とその必要性を明確にすることが求められる。その上で、全道全ての自治体や関係団体、道民などに導入に向けた考えを示し、教育旅行や合宿の招致など市町村のこれまでの取組に影響が生じないよう減免の範囲などを含め、丁寧に合意形成を図ること。

(6)人手不足の解消

a 交通・物流事業

・運送事業者や旅客運輸事業者は、広域分散型の本道の日常生活や経済活動を支え重要な役割を担っているが、時間外労働の上限規制で大幅な賃上げをしなければ人手を確保できない課題に直面している。安定的かつ効率的な物流・旅客運輸体制を確立するため、道が設置する交通・物流連携会議の議論を踏まえ、国との連携のもと、情勢の変化に柔軟に対応できるよう、物流ネットワークの形成を図るとともに、バス路線維持に向けた取組を進め地域交通の確保に努めること。

b 建設産業

・建設産業における担い手不足は、ラピダスの進出に伴う工事の本格化と相まって、人材の獲得競争が激化することが大いに懸念される。併せて、北海道新幹線の札幌延伸に伴う大規模再開発が相次ぐ札幌市中心部では、今年4月に残業時間に上限規制が課せられる中、人手不足が深刻化している。資材高騰などで賃上げも限界があり、中小事業者は人材の確保に大変苦慮している。現状や課題の把握に努めるだけでなく、「北海道人材確保対策推進本部」を中心に、業界団体と連携のもと、ICTによる業務効率化やベンチャー企業との協力による生産性の向上など必要な支援を講ずること。

5 医療・福祉政策について

(1)子育て支援

・子育て支援については、子ども家庭庁をはじめとする関連する国の省庁との連携を強化するとともに、庁内の組織横断的な情報の共有化、調整、連携の強化を図り、子育て世帯の負担軽減のため保育料、学校給食費、高校生までの医療費等の実質無料化、保育人材の育成や周産期医療の確保、不妊治療や妊産婦への支援の他、社会全体で支える仕組みの構築に取り組むこと。

・子どもの貧困について、家庭の経済格差が子どもの人生の選択肢を狭めることがないよう、ひとり親家庭をはじめ生活困窮世帯への経済的・社会的支援を拡充すること。

・子どもに寄り添った権利や利益を保護し、支援するための仕組みを整備するとともに、現実と乖離しない施策の弾力的な運用、あるいは新たな施策の検討を図ること。

(2)少子化対策

・過去の対策の問題点を検証し、また、次世代を担う若者の声を踏まえ、就職、結婚、保育、教育など人生の節目での課題や意識などを整理した上で包括的な制度設計の構築に努めるとともに、広く道民に周知を図ること。

また、国立社会保障・人口問題研究所の2050年の将来推計人口では、地域の将来を支える0~14歳人口の減少が深刻なことから、子育て支援の更なる充実・強化、男女の賃金や評価、役割といった格差是正、地方に住み働けるための環境整備、特に若者を雇用する場の誘致など人口流出の防止と雇用の創出にこれまで以上に取り組むこと。

(3)高齢者・障がい者福祉

・高齢者や障がい者の福祉施設では、虐待などの不適正な事案、人権問題など深刻な事案が繰り返されている。実態把握と原因究明はもとより、当事者の人権に配慮した実効性のある施策として、健全かつ適正な介護人材の育成を図るとともに、職員の負担軽減に繋がるデジタル化の推進、高齢者の健康づくりに資する取り組みの促進を図ること。併せて、人材不足解消のための施設職員の処遇改善を講じること。

(4)医療の確保

・昨年5月8日から新型コロナウイルス感染症の法律上の位置づけが「5類感染症」なったが、有識者会議で議論されてきたコロナ対策の検証等を踏まえ、次なる新興感染症に襲われた時に再び深刻な状況を繰り返さないため、平時からの医療の確保に万全を期すことはもちろん、道民一人ひとりの意識醸成を図ること。

なお、5類移行に伴い医療への公費投入は縮小された。自治体病院などは、物価やエネルギーの高騰や患者の減少などにより経営難に陥る医療機関が少なくない。今後、新興・再興感染症への迅速かつ適切な対応や地域医療の確保する観点から、医療機能及び体制が後退しないよう道として必要な支援や調整を実施すること。

また、北海道医療計画や医師確保計画等の次期計画策定に際しては、今後の著しい人口減少が想定される中にあっても道民が安心して地域で暮らしを続けられるよう、医療及び介護の総合的な確保を促進する措置に実効性を持たせる計画とすること。

(5)ケアラー対策

・家族の世話を担うケアラー(ヤングケアラーを含む)の問題は、当事者が気軽に相談しやすい環境づくりと、相談がしっかりと課題の解決にまで繋がるよう、フォローアップ体制を強化すること。

(6)新型コロナウイルス感染症への対応

・新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類は昨年5月より5類に移行したものの、それによりコロナが終息した訳ではない。今後も、有識者会議で議論されてきたコロナ対策の検証を踏まえ、基礎疾患のある方や高齢者、厳しい現場で対応する人などに配慮し、感染拡大の兆候が見られた際には、道民への丁寧かつ迅速な情報提供とともに、柔軟に必要な対策を速やかに講じること。

(7)子どもの自殺

・2023年度から「第4期の北海道自殺対策行動計画」がスタートしたが、計画上の主な取り組みが十分な効果を得られるよう、一部担当部署の努力のみに依拠せず、医療、保健、福祉、教育の各セクションが連携を一層強め、具体の事案への対応時には一体となって総合的に対策を行うなど、本道の子どもたちから決して一人の自殺者も出さないという強い覚悟をもって取り組むこと。

6 防災・減災対策について

・今年1月1日には令和6年能登半島地震が発生し、石川県の能登地方を中心に富山県、新潟県に及ぶ広範囲に甚大な被害を及ぼした。多くの方の尊い命が犠牲となり、また、被災された方々は現在も不自由な避難所での生活を強いられている。

本道では、昨年度の組織機構改正で日本海溝・千島海溝沿いを震源とする巨大地震に備え「海溝型地震対策室」を設置し、各振興局に危機対策に主幹級職員を配置するとしたが、今般の能登半島地震で明らかとなった様々な課題を深刻に受け止め、組織強化のみならず大規模な地震発生時の円滑な災害応急対策活動等を行えるよう、道内自治体や警察、消防、自衛隊等の関係機関と連携し防災・減災の取り組みを強化するとともに、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関し、市町村が講じる対策に必要な財政支援を行うこと。

・地震や集中豪雨など自然災害は、いつ、どこで発生してもおかしくない現状から、継続した防災・減災意識の醸成に取り組むとともに、災害弱者と言われる高齢者、障がい者、子ども、疾患のある人、外国人などの移動手段の確保を含む避難計画の早期策定に向けた市町村支援、加えて、積雪寒冷期の避難や感染症対策も含めた避難所の設置・運営について、十分な検討と対策を講じること。また、周囲へ遠慮せずに避難所で生活できる体制を整えるための支援を強化すること。

・一昨年2月の大雪では札幌市や石狩地方を中心に大規模な交通障害が発生した。年が明けてからも道北を中心に暴風雪による生活道路の寸断など命や暮らしに関わる深刻な事案が発生していることから、「大雪に係る関係機関の対応検証と今後の対応策に関する報告書」を踏まえ、実効ある雪害予防対策や応急対策を講じるとともに、実践的な訓練などを通じて道民の安全・安心と社会経済活動の維持を図ること。

7 地方交通政策について

  • JR路線維持問題

・JR路線維持問題に関しては、年度末までに何らかの方針が示される予定であるが、鉄道路線に限らず地域公共交通を取り巻く環境は一層厳しさを増しており、かつ本道の人口が減少する中でJR北海道の経営努力だけに頼るのは限界にあることから、道は道内各地域の実態の把握に努めつつ、国の責任において実施すべきことは強く求めるとともに、持続的な鉄道網の確立に向け、道としての責務をしっかり果たすこと。

  • バス路線の維持

・道は、これまで事業者に対し事業継続等への支援などに取り組んできたものの、道内全域でバス路線を安定的に維持するには依然として大きな不安が残っている。全国的なバス運転手の不足が言われるが、賃金が低いため人生設計が難しく20代から40代の若い世代が入らないというバス業界の構造的な問題が背景にあるとされており、こうした点も含め早急な対策が求められるが、路線廃止の理由を詳細に分析した上で、道としてバス路線維持に向けた対策を再構築し、各自治体や事業者と連携してしっかりと取り組むこと。

(3)新千歳空港駅のスルー化

・新千歳空港駅のスルー化は、新千歳空港へのアクセスを飛躍的に高め、道南・道東からのアクセス改善はもとより、道内空港の一括民間委託の効果拡大に大きく貢献することから、空港アクセス鉄道の抜本的改良を行うこと。

(4) 円滑な物流の確保

・日常における円滑な物資や人員輸送を確保するため、トラックや鉄道、フェリーなど各モードの特徴を活かした複合一貫輸送の推進、物流の役割を考慮した道路網の整備や鉄道ネットワークの維持に向けた取り組みを講じるとともに、災害発生時などにおける物資の円滑な流通を担保するため、物流の基幹的広域防災拠点を整備すること。

8 環境政策について

(1)ヒグマ対策

・今後のヒグマ対策については、春期管理捕獲に実施に係る財政支援に加え、民間によるハンターの育成・確保には限界があることから、研究機関や関係団体と連携し、各(総合)振興局における専門家(狩猟免許を持ち、野生動物のモニタリング調査や対策方針の立案などを担当する職員)の配置により対策の拡充・強化を図ること。

(2)ゼロカーボン北海道の推進

・温室効果ガスの削減は、市町村、事業者、道民の幅広い連携・協力が不可欠であり、知事の指導力発揮が欠かせない。一昨年から本格化した「ゼロカーボン北海道」の実現に向けた取り組みを着実に進めること。一方で再生可能エネルギーなど多様なエネルギーについては、費用対効果を勘案しつつ活用することが求められることから、排出者による排出削減への取り組みを加速させるために、さらなる啓発、技術開発と普及に向け、あらゆる資源の投入や支援を行うこと。

なお、知事が公約で掲げ創設した地球温暖化防止対策基金(セロカーボン北海道推進基金)については、昨秋まとめられた活用方針を踏まえつつ運用の明確化を図り、速やかに事業化すること。

(3)再生可能エネルギーの拡大

・日本屈指の資源を持つ北海道の再生可能エネルギー導入をより一層拡大すること。一方で、メガソーラー(大規模太陽光発電)が自然を破壊し、住民が反対するケースが全国で相次いでおり、また、洋上風力発電の設置には地元漁業者との合意が必須要件である。トラブルを未然防止するには、地域の方々が参画して再エネを進めることが肝要であり、併せて安定した供給量の確保や高額な発電コストの低減など、課題の解決に向けた方向性も丁寧に説明すること。

9 農林水産業の振興について

(1)農畜産業政策

・肥料・飼料、燃料、生産資材等の高騰などにより苦境に立たされている1次産業への継続的支援が急務である。原価率ばかり上がり「稼げない農業」のイメージが強まれば担い手不足に拍車が掛かることは必至であることから、農家の負担軽減に対する当面の支援と、将来に向け持続可能な営農に繋がる仕組みづくりを整えること。

・昨年3月から4月にかけて千歳市の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザは、3カ所で計122万羽が殺処分された。これは道内で飼育される全体の約2割に当たり、品薄や鶏卵価格の高騰で道民生活や事業者活動に影響が波及したことは記憶に新しい。ワクチン接種や吸気口フィルターの設置などこれまでの対策の在り方を見直す必要も生じることから、鶏舎の分割管理を導入する農場への費用助成など財政的な支援を講じること。

加えて、家畜伝染病発生時に対応する獣医師は慢性的な欠員状態にある中、道内のみならず他県での対応などにも派遣されている。獣医師の人材確保・人材育成についても早急に取り組みを強化すること。

(2)林業政策

・一昨年3月に新たに策定された「北海道森林づくり基本計画・道有林基本計画」に掲げられた7つの「重点的な取組」が達成されるよう着実に推進を図ること。また、物価高騰に伴い林業分野でも影響が深刻化していることから、 効果的な支援策を打ち出すこと。

・令和6年度から課税される森林環境税及び森林環境譲与税については、各地域における取組の進捗状況や市町村の意見を踏まえ、適宜、譲与基準の割合や基準の見直しを求めるとともに、譲与税を森林整備や木材利用等に一層活用し、道民の理解を深めること。

  • 水産業政策

・ロシアのウクライナ侵攻に伴う日ロ関係の悪化は、北方領土周辺水域の漁業に影を落としている。加えて、燃油や資材の高騰が追い打ちを掛け、本道漁業は厳しい状況が続いている。効果的な支援策を打ち出すこと。

・東京電力福島第1原発で発生した処理水について、地元漁業者の理解が得られないまま、昨年8月に海洋放出が始まった。国は、海洋放出に伴う水産業支援として、総額1,007億円の対策を行うとしているが、次年度以降も中国の禁輸措置も続くことが想定されることから、漁業者や流通・加工業者の安定的な事業運営と生活を守るための継続的な支援を講じること。

10 エネルギー政策について

(1)泊原発再稼働

・泊原発再稼働については、国のエネルギー政策の大転換に伴い原発回帰の気運が高まる中にあって、未だ住民の不安の解消に至っていない福島第一原発事故や、先ごろ発生した能登半島地震における北陸電力志賀原発での様々なトラブルを踏まえ、北海道に原発の必要性は極めて低いという根本的な視点を忘れず対応すること。

(2)高レベル放射性廃棄物最終処分場

・高レベル放射性廃棄物最終処分場の選定については、知事選告示直前のマスコミインタビューで概要調査への移行時における知事の意見聴取に関して、現時点で反対の意見を述べるとの姿勢を明らかにした。今後も「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」を遵守し、反対の姿勢を貫くこと。

また、最終処分場の選定問題は、一自治体ではなく、北海道全体の問題として捉えることが肝要であり、道は、道条例に則った道民意識の醸成と世論喚起に向け、積極的かつ継続的に取り組むこと。

(3)ゼロカーボン北海道の推進

・温室効果ガスの削減は、市町村、事業者、道民の幅広い連携・協力が不可欠であり、知事の指導力発揮が欠かせない。一昨年から本格化した「ゼロカーボン北海道」の実現に向けた取り組みを着実に進めること。一方で再生可能エネルギーなど多様なエネルギー源については、費用対効果を勘案しつつ活用することが求められることから、排出者による排出削減への取り組みを加速させるために、さらなる啓発、技術開発と普及に向け、あらゆる資源の投入や支援を行うこと。

なお、知事が公約で掲げ創設した地球温暖化防止対策基金(セロカーボン北海道推進基金)については、昨秋まとめられた活用方針を踏まえつつ運用の明確化を図り、速やかに事業化すること。(「8 環境政策について」の(2)の再掲)

(4)再生可能エネルギーの拡大

・日本屈指の資源を持つ北海道の再生可能エネルギー導入をより一層拡大すること。一方でメガソーラー(大規模太陽光発電)が自然を破壊し、住民が反対するケースが全国で相次いでおり、また、洋上風力発電の設置には地元漁業者との合意が必須要件である。トラブルを未然防止するには、地域の方々が参画して再エネを進めることが肝要であり、併せて安定した供給量の確保や高額な発電コストの低減など、課題の解決に向けた方向性も丁寧に説明すること。(「8 環境政策について」の(3)の再掲)

11 人権等施策について

(1)パートナーシップ制度の導入

・パートナーシップ制度は、性的マイノリティ当事者のみならず、社会全体おいても多くのメリットを創出することが考えられる。道新の調査によれば、道内では今月11日現在で札幌や帯広など10市が既に制度を導入し、2024年度末までに導入予定の旭川や釧路など19市町と合わせると、道内人口の約7割が制度を利用可能となるが、広域自治体である道の制度導入に向けた動きは鈍いとのことである。当事者を含めた道民の多くが、市町村への後押しも含め、道の強い指導力に期待しており、導入促進に向け、道がリーダーシップを発揮するとともに、併せて道自身が、早期の制度導入に取り組むこと。

(2)男女平等参画計画の策定

・SDGsの目標の1つである「ジェンダー平等の実現」に積極的に取り組むこと。併せて人口減少が進む中、持続的成長の実現と地域社会の活力を維持するための男女平等参画社会の実現に向け、男女平等参画計画の策定は極めて重要である。道は未策定の市町村(令和4年4月1日現在:76市町村)に対し、市町村の事情や地域の状況に配慮しつつも、可能な限りの早期策定に向けた働きかけを行うこと。さらに、施策の方向の項目ごとの目標が目標年次に達するよう、引き続き、関係部局との連携を強化すること。

(3)多文化共生

・多文化共生については、単に支援に止まらず、それぞれの母国や文化を持つ外国人の個性などが尊重され、自分らしく生き生きと生きられる社会を目指すべきであり、道として地域の大切な一員として受け入れ、共に暮らしていけるよう地域社会の形成を図り、多民族の社会化に備えること。

12  重要土地等調査法について

・本法律は規制の内容や調査の範囲、罰則の対象が曖昧で、恣意的な運用や私権制限につながる危険性がある。今後、区域指定が進むに伴い、様々な課題が生じることが想定されることから、すべてを国任せにするのではなく、道民の安全などを第一に考え、道が主体的に課題に対応すること。

13 教育課題について

(1)教員の働き方改革

・教職における多忙化解消と教職員の働き方改革を強力に推進すること。特に学習指導要領に基づき国が定めている標準の授業時間数を大幅に超過している学校には、速やかな見直しを求めること。併せて教職員の確保は喫緊の課題であり、確保に向けた魅力ある発信を促進するため、特に長期休業中のテレワークの実施など、国の動向に関わらず、現下の体制等の中で、可能な独自の取組を進めること。

(2)いじめ問題などへ対応するための定数の増加

・いじめ問題については、依然として認知件数は相当数に上り、時に学校側の不誠実とも取れる対応によりいじめと認知するため時間を要した事例も散見する。現場では、いじめ予防プログラム等を作成し対応しているが、きめ細やかに対応する人員が圧倒的に不足している。いじめ問題に対する職員定数の増員、ICT支援員の確保に取り組むこと。

(3)インクルーシブ教育の推進

・差別のない社会を実現するため、誰もが尊重される環境を教育現場から整えることが必要である。昨年1月には、障がい者当事者がつくる団体がインクルーシブ教育推進の要請書を道教委に提出しており、各地で関係団体が国連の勧告を厳しく受け止め、必要な施策を講じるよう関係機関に要請している。社会全体で「どうすれば実現できるか」と考え、議論することが不可欠なことから、長期的な視点に立ち施策を講じていくよう国へ積極的に要請すること。

(4)子どもの自殺

・2023年度から「第4期の北海道自殺対策行動計画」がスタートしたが、計画上の主な取り組みが十分な効果を得られるよう、一部担当部署の努力のみに依拠せず、医療、保健、福祉、教育の各セクションが連携を一層強め、具体の事案への対応時には一体となって総合的に対策を行うなど、本道の子どもたちから決して一人の自殺者も出さないという強い覚悟をもって取り組むこと。(「5 医療・福祉政策について」の(7)の再掲)

(5)奨学金制度の拡充

・有利子の貸与型奨学金を利用している学生の中には、将来の多額な返済金に不安を抱いている利用者が少なくない。物価高騰の影響により日々の生活にも苦慮しており、経済的に困窮している実態も散見する。給付型や無利子の奨学金の受給要件の緩和とともに、制度の拡充を図ること。

(6)ケアラー対策

・家族の世話を担うケアラー(ヤングケアラーを含む)の問題は、当事者が気軽に相談しやすい環境づくりと、相談がしっかりと課題の解決にまで繋がるよう、フォローアップ体制を強化すること。(「5 医療・福祉政策について」の(5)の再掲)

(7)学校等こども関連施設における空調(冷房)設備整備

・昨夏の北海道の気温は連日30度を超え、子どもたちは猛暑の中厳しくつらい学校生活を余儀なくされたことから、命と健康を守るための空調設備整備などの熱中症対策を国への要請も含め集中的に計画性を持って進めること。

(8)高校生への情報端末配備

・高校生への「一人一台」情報端末整備について、「子ども応援社会」という風潮、あるいは物価高騰が続く中、また、全国の半数近くの府県は設置者負担(交付負担)としている現状を踏まえれば、道として公費負担による端末整備を行うことについて再検討すること。

以上

説明の後、意見交換の時間がありました。わたしからの意見と知事のコメントです。

渕上)
知事が発信されているSNS(Facebook、Twitter、X)をたいへん楽しく、興味深く拝見している。先進的な取り組み、注目されていること、期待が寄せられているものなどについて投稿されている。Instagramではゴールデンカムイについて2件投稿があり、わたしも映画を観てきたところ。夢がある、キラキラしたもの、クールなものといった投稿はそれはそれでいいが、困難を抱えている人、苦しんでいる人、助けを求めている人の姿が見えてこない。取り組まれているとは思うが、胸が苦しくなるような重たい投稿は見られない。例えばひとり親家庭で困難を抱えている人、フードバンクに押し寄せる人々、氷河期世代でいくつもバイトをかけ持ってなんとか暮らしている人など。その姿勢は新たな総合計画の策定にも反映しているように見える。社会の、光があたらない陰の部分にしっかり目を向けて発信し、政治姿勢として示していただきたい。
知事)
困難を抱えた人など、道民の声を発信することは重要。寄り添った上で対応していきたい。

ところで、今日はライラックのスカーフで臨みました。ライラックは北海道の花です。