「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録に係るユネスコ諮問機関の勧告について

昨日、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関であるイコモスから、「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、世界遺産への登録が適当である旨の勧告がなされました。詳細情報についてお知らせします。

 

イコモスの評価結果及び勧告の概要
(「北海道・北東北の縄文遺跡群」)

①顕著な普遍的価値(OUV)について
北海道北東北の縄文遺跡群は、約15,000年前に遡る農耕以前における定住生活の在り方及び先史時代の複雑な精神文化を示す17の構成資産から成る。
②完全性について
イコモスは、資産全体及び個々の構成資産において完全性が担保されていると考える。なお、不適切な構造物等に関して影響の軽減を図る、もしくは撤去する取組については継続するべきである。
③真実性について
イコモスは、資産全体及び個々の構成資産において真実性が担保されていると考える。
④比較研究について
イコモスは、本資産の世界遺産一覧記載を検討するために適切に行われていると考える。構成資産の選択も論理的に説明されている。
⑤評価基準の適用について
・基準( i i i )について
イコモスは、本資産が先史時代における農耕を伴わない定住社会及び複雑な精神文化を示しており、この評価基準が適切と考える。
・基準(v)について、
イコモスは、本資産が定住社会の発展段階や様々な環境変化への適応を示しており、この評価基準が適切と考える。
⑥資産に影響を与える要因について
イコモスは、資産に与える主な懸念は開発圧力であるが、適切に法的保護が図られていると考える。
⑦保存管理について(資産範囲,緩衝地帯(バッファー・ゾーン)、保護措置.管理運営)
イコモスは、各資産の保存管理は国及び地方自治体からなる統一のとれた体制によって適切に行われており、地域住民の参加も十分にみられ、また来訪者管理も周到に準備されていると考える。資産範囲には一部民有地が含まれており、法的に保護されているものの、公有化の取組を進めることが重要であると考える。
⑧勧告
イコモスは、評価基準( i i i )及び (v) の下に世界遺産一覧表に記載することを勧告する。
イコモスは、締約国が以下を考慮することを併せて勧告する。
a )現状で民間所有となっている土地について、公有化を進めること
b )不適切な構造物について、撤去又は影響の軽減を図ること
c )考古学的記録及び出土遺物に関する情報を拡充すること(発掘記録、遺物の目録化、調査報告書など)
d )『作業指針』パラグラフ40及び117’に示す開かれた遺産管理の精神に基づいて、資産の保存-管理にまだ関わっていない関係者の参画を促すこと
e )いずれの構成資産についても、資産範囲、緩衝地帯の範囲、(特別)史跡の指定範囲、周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲を示した地図を提供すること。

*『世界遺産条約履行のための作業指針』(文化庁仮訳)
パラ40 世界遺産資産の保全管理に利害関係を有する又は従事する個人その他の関係者、特に地域のコミュニティ、現地の人々、政府機関、非政府機関、民間組織、所有者は、世界遺産の保護及び保全のパートナとなり得る。
パラ117締結国には、世界遺産資産のための効果的な管理活動を効果的に実施する責任がある。締約国は、資産の管理者、管理権限を持つ機関その他のパートナー、及び資産管理関係者との緊密な連携を図る。
以上