北方領土対策委員会道外調査 3日目 第十一管区海上保安本部

北方領土対策委員会道外調査3日目は次の日程でした
・第十一管区海上保安本部
・沖縄県平和祈念資料館
・北方領土返還要求沖縄県連絡協議会との意見交換

第十一管区海上保安本部
このような流れでした。
・委員長の挨拶
・道から日ロ漁業の概要について説明
・総務部長より業務概要についての説明
・警備救難部長より尖閣諸島における領海警備についての説明
・質疑応答

日ロ漁業の概要について
1. 日ロ地先沖合漁業について
R7の割当総量は昨年の半分。サバの漁獲量が減っていることによるもの。
2. 日ロさけ・ます漁業について
ロシアとの協議で、母川に戻る魚は母川国主義がとられている。流し網漁業が禁止され、現在はトロール漁業。割当量は2050トンで前年と同じ。
3. 北方四島周辺水域安全操業について
2022年以降、ロシア側が協議に応じず、現在は操業されていない。
4. 貝殻島コンブ漁業について
1963年から日ソ合意により開始。現在も民間協定に基づき継続。昨年は不漁だったが今年は豊漁見込み。

業務概要について
・国内では全11管区で、第十一管区は沖縄沿岸を管区とする(本島の北の与論島は第十管区)。九州から関東まで入るくらいの広さ。那覇と石垣に航空基地がある。
・職員は1909名で全国一。うち、女性110名。巡視船32隻、巡視艇17隻、航空機7機、ヘリコプター8機、航路標識342基。巡視船あさづきは6500トンでヘリコプター搭載可。
・普天間代替施設(辺野古のことか?)の警備、マリンレジャーの安全対策、離島からの急患搬送などの業務を担っている。
・沖縄周辺海域は、日本とアジア、ヨーロッパを結ぶ重要な海上交通路(シーレーン)である。
R6.12のダイビング船の救助活動とR5.1の石垣島浜島沖貨物船乗揚げ海難の救助活動の動画を視聴しました。いずれも全員救助されています。

尖閣諸島における領海警備について
・魚釣島は石垣島から170km、台湾から170km。石垣に尖閣領海警備の基地があるが、巡視船を使っても片道6時間。
・尖閣諸島は 魚釣島(しま)・久場島(しま)・北小島・南小島・大正島(とう)の5島。尖閣諸島の海域は四国と同じくらい。十一管区では領海(12海里)と接続水域をカバーしている。
・尖閣諸島は1895年に沖縄に編入されている。
・S44に国連アジア極東経済委員会で石油埋蔵の可能性を指摘。その後、中国と台湾が領有権を主張しはじめた。
・中国海警船は4隻。5000トンクラスのかなり大きい船を派遣している。4隻とも砲を備えている。
・中国海警船、侵入件数はR6で89回、355日。H24以降ふえている。H24は40隻、R6で161隻。現在はほぼ通年で居る。
・H30を境に増えている。もともと中国海警局は政府の機関だったが、H30に軍の指揮系統にはいり、中国の対応が厳しくなっている。
・船が大きくなると、台風耐性がある。結果、通年で徘徊している。
・日本の漁船が領海で操業すると、中国の海警局の船が妨害する。海保は妨害されないように対応している。昨年は18件。対峙する時間が長くなり、不測の事態が発生するリスクが高まっている。
・尖閣付近はアカマチの漁場。アカマチは水深200mくらいに生息する深海魚で、キロ当たり2~3000円で取引される高級魚。
・最近は領海に入る漁船はなくなってきている。
・最近、領空侵犯も発生している。海保は領空侵犯への対応はないが、無線で警告している。自衛隊が対応している。
・最近、尖閣のことは報じられなくなっている。領空侵犯や、日本漁船への妨害は厳しくなっている。全力で取り組んでいる。海保へのご理解ご協力を。
2021年4月のニュースの動画を視聴しました。漁船鶴丸を中国海警局の船が追尾、その周りを海保が警護。鶴丸が領海に入るとそのまま中国海警局の船が領海に入ってきました。カメラで監視しながら電光掲示板で中国の海域であることを主張。そこへ海保の巡視船が間に割って入り護衛しました。

質疑応答です

Q 自衛隊との連携について
A 自衛隊との連携は重要。現場だけでなく、東京も一体的にオペレーション。中央、現場、本部で連絡態勢。現場はリアルタイムで自衛隊に共有。遅滞なくできている。引き続きしっかりやっていきたい。自衛隊との連携は救護活動など長い歴史がある。

Q コミュニケーションについて。中国船は中国語で対応しているが、救難救助(の場合はどの言語が通じるかわからないが)はどういう言葉、システムで対応するのか。自前で養成するのか外部から通訳士を入れるのか。
A 貿易船については英語。船舶電話、衛星電話でコミュニケーションをとる。救難体制については、中国・台湾・韓国、レスキューを結ぶ条約があり、どこが救助するか調整できる。中国・韓国・ロシア語については独自で養成。主に密輸に関わった外国人の取り調べなど(船に乗るわけではない)。

Q 港や環境調査の施設をつくることで日本の支配を明らかにしていくほうが良いのではと考える。そういった施設を作った場合、中国の反応をどのように想定しているか。海保にどのような影響があるか
A 中国は尖閣の国有化に激しく反応した。何かをしたら相応の反応はあるだろうと現場感覚で持っている。

Q 中国の船が大型化していることに対し、船と職員の充足について
A (船について)政府の方針で大型の巡視船を順次建造している。
A (船員について)学生の募集、船の中の個室やネット環境の整備など魅力の向上に努めている。離職者を出さないようにしている。

Q 女性職員について
A 年々割合が増えている。育児休暇など制度面の拡充が伸びている。

Q 管区によって仕事量に差がある?
A 忙しさはそれほど変わりない。北朝鮮のミサイルなど、それぞれ海域に応じた問題がある。十一管区は忙しいが、全般的に忙しい。

海上保安本部は公務でなければなかなか機会がなく、直接話を伺う貴重な機会となりました。中国船との接触が高まる中、日夜領海と周辺の警備にあたられているみなさまに敬意と感謝を申し上げます。