投票の前に考えたいこと 排外的言説に惑わされないために

参議院議員選挙の期間中、外国人に対するバッシングやデマが急増しています。不法行為への対策や土地取引の規制などについて議論すること自体は重要です。しかしその一方で、「外国人は生活保護で優遇されている」など、事実とは異なる情報が広まり、社会に誤解と分断を招いています。

このような過激な言論に触れた際には、すぐに飛びつくのではなく、事実かどうか一度確認していただきたいと思います。

現在の政治や物価高騰への不満、生活の苦しさに共感する声があるのは当然のことです。しかし、こうした不満の矛先を外国人に向けたとしても、私たちの暮らしが改善されるわけではありません。怒りを向けるべき相手を見誤ることは、結果として問題の解決を遠ざけてしまいます。

ヒトは生物として、「自分と異なる集団」に対して制裁を加えることで「快楽」を感じるという性質を持っていることが、脳科学の分野の研究で示されています。排除や攻撃の衝動は、しばしば“正義”が後付けされますが、実際にはその多くが感情に根差した快楽に過ぎず、正義とは無関係です。

こうした排外的な言説は、これまで政治の場面でも「支持を集める手段」としてたびたび利用されてきました。不満をそらし、敵をつくることで結束を演出する。その結果、人類は多くの過ちを繰り返してきました。しかし、私たちにはその衝動を抑え、共に生きる道を選ぶ力もあります。

どうか、排外主義に加担しないでください。たとえ親しい方からそうした言説を持ちかけられても、どうか共感しないでください。

北海道では、「北海道総合計画」の中で、「誰もが人権を尊重され、活躍できる社会の実現」を掲げています。北海道の基幹産業である食を支える農業・水産業は、深刻な少子高齢化の影響を受け、いまや外国人の力なくしては成り立たない状況にあります。

地方の一次産業が衰退すれば、都市部の活力低下にも直結します。北海道が持続的に発展していくためには、多様な人々が互いを認め合い、共生し、活躍できる社会を築いていくことが必要不可欠です。

今回の選挙で投票先を決めるにあたり、自分が外国人など特定の人たちに制裁を加える「快楽」に陥っていないか、一度立ち止まってよく考えていただきたいと思います。