北海道札幌聾学校
北海道札幌聾学校は、1949年に設立された、札幌市北区北26条西12丁目に位置する、聴覚に障害のある幼児・児童・生徒を対象とした特別支援学校です。このたび学校を訪問し、校長先生より貴重なお話を伺いました。
札幌聾学校には幼稚部、小学部、中学部、乳幼児教育相談室、そして寄宿舎が設けられており、合計で53名の児童生徒が在籍しています。以前はより多くの子どもたちが通っていましたが、少子化に加え、聴覚に障害のある子どもたちが地域の普通学校に通うケースが増えていることもあり、在籍数は半数ほどに減っているとのことです。
近年では、生後1か月程度の段階で聴覚に障害がある可能性を早期に検査できるようになっています。障害の疑いが見つかった際には、保護者の心理的サポートや子育てに関する相談の場として、乳幼児教育相談室はその役割を果たしています。
聴覚障害にはいくつかのタイプがあり、外耳や鼓膜に異常がある場合、あるいは内耳に障害がある場合があります。札幌聾学校に通う児童生徒の多くは、内耳に障害を抱えており、この場合には骨伝導タイプの補聴器では十分な効果が得られません。そのため、耳のうしろに人工内耳を埋め込む手術を受ける子どもが多くいます。人工内耳を使うことで、30デシベル程度の小さな音、ささやき声なども聞き取ることが可能になりますが、細かな発音などは聞き取れない場合があります。
授業は手話を用いるクラスもあれば、音声を中心に行うクラスもあり、児童によっては手話と声を組み合わせて学ぶ姿も見られます。また、聴覚障害と知的障害を併せ持つ子どもも在籍しており、それぞれのニーズに合わせたきめ細やかな指導が行われています。
人工内耳によって一定程度「聞こえる」ようになることで、周囲から「普通に聞こえている」と誤解されることも多く、子どもたちは時に見えにくい困難を抱えています。授業中は聞き取れていても、休み時間や昼食時の友達との会話では細かな聞き取りが難しく、クラスにうまくなじめないといったこともあるようです。
校長先生は、聴覚に障害があることで、子どもたちが本来持っている力を十分に発揮できず、学力の低下につながるようなことはなくしていきたいと語ってくださいました。
訪問する前は、児童・生徒は全く耳が聞こえずみなさん手話で会話しているような風景を想像していましたが、実際はだいぶん違い、たいへん勉強になりました。お忙しい所ご対応いただきました菅野校長先生をはじめ、北海道札幌聾学校のみなさまに心より感謝申し上げます。